すがりなん

 チーとマーの通っている幼稚園はお寺がやっている幼稚園で、入園式の4月8日には花祭りのお祝いもしていた。わたしもこの幼稚園を卒園しているが、園舎はもちろん制服もその頃とはすっかり代わっている。でも代わっていないものが二つ、「園歌」と「ほとけの子」という歌。どうやら入園してから毎日のように歌の練習をしているようだが、我が家では入園するだいぶ前からおばあちゃんが子守唄のようにこれらの歌を歌って聞かせていたようで、チーもマーもほとんど覚えていた。
  われらは仏の子供なり
  嬉しいときも悲しいときも
  御仏の袖にすがりなん
というような歌詞なんだけれど、これが短調でとっても暗〜い歌。でも、園で先生のオルガンに合わせてみんなで歌うのが楽しいんでしょうなあ。家に帰ってきても、コレばかり歌いまくっている。そして合間にはわたしのところへ「ママ〜っ!」などと助けを求めるように走り寄ってきて、しがみつき一言、「スガリナン」・・・(ふうっ。どうやら”すがりなん”の意味をおばあちゃんが「あんたたちもよく『ママ〜』って言って助けてもらうでしょ、そういうことだよ」と教えたらしい)・・・この「すがりなん」攻撃が代わりばんこ、そしてBGMは短調の歌・・・最初は一緒に歌ってあげていたけれどね、もうこの頃では何だかどっと気が滅入ってきてしまう。そんでもってつい「おいおい、あんたたちはママの子でしょ、どうして仏の子なのじゃ!」などといじわるまで言う始末。「くっ、暗いなあ」というつぶやきが聞こえたのか、マーちゃんはとうとうオペラ調で派手に歌ってみせるようになってしまった。助けて!