子宝に恵まれたんだっけ

 子供が欲しくてたまらなかったころ、子授けにご利益があるお寺や神社の情報を探しては、出向いてお参りをしたものだった。でもそのかいもなく、毎日いらだつばかり・・・。
そんな時、通っていた病院の看護婦さんが「昇仙峡にいい神社があるのよ。わたしもそこへお参りにいったら赤ちゃんができたの。」と教えてくれ、生の声に本当にご利益があるような気がして、その年の秋、紅葉見物を兼ねて昇仙峡の「夫婦木神社」へと出かけた。お札とお守りをいただき、飾り方と朝晩のおつとめの仕方を教わった。
 それからは飾られたお札に向かって念じる日々。「どうか赤ちゃんができますように」心から何百回と祈ったかわからない。もうすっかりご利益があると信じてしまうほどだったから。だからこんなに祈ったのに『まだできない』」とわかるたびに落ち込み、投げやりになる一方だった。ところがところが、年が明けて妊娠発覚!それも双子!!赤ちゃんができたら安産のお守りを届けてくださると聞いていたので、さっそく喜びとお礼を伝え、手紙を書いた。
 それからすぐに、神社の宮司さんから丁寧なお返事とお守りが送られてきた。有名な神社なのでたくさんの参拝客がいることだろうに、ただ一度伺った自分にこんなに思いやりのある温かい手紙を下さったことがうれしくて、子供が生まれた報告、そして年賀状と、書面での近況報告が始まったのだった。いつかこの子たちが大きくなって遠出ができるようになったら、ぜひお礼にでかけたい!思いつづけていた夢がとうとう叶う日がきた。
 昨日まかいの牧場でたっぷり遊び、山梨石和温泉に一泊。いよいよ昇仙峡に向けて出発。見えてきた、夫婦木神社。見覚えのある鳥居をくぐり、賽銭箱の前で手を合わせながら、「チーちゃん、マーちゃん、ナムナムだよ。チーちゃんとマーちゃんがママのところにきますように、ってここでお願いしたら、チーちゃんとマーちゃんが本当にママのところに来たんだよ」わかったのかわからないのか、小さな手をピタッと合わせている2人。すると「もしかしてYasukoさんですか?」という声。振り向くと宮司さんとその奥さんらしい方がこちらを見ている。「そうです、沼津の・・・」声を上ずらせながら駆け寄ると「あのね、もしかしたらそうじゃないかって、今、年賀状を見直していたんですよ、毎年楽しみにしていてね、なんだか孫のように思えて・・・」わたしたちを離れたところからこんなに気にかけていてくださる人がいる!うれしい感動に目が潤みそうになった。「御払いをしてあげるね」というご好意に甘えて、一家四人で神様の前に座ることに。(5月5日へ続く)