運動会の思い出(3)

 勝てなかったけれど、きっと忘れられないのが昨年の運動会。4月、体育の時間にやったリレーがぼろぼろ・・・。隣のクラスが2チーム、うちのクラスが2チームの4チームで走るのだが、2チームとも見事な負けっぷりだった。何度やっても結果は同じ。どうにもなりそうにないこれからにため息が出た。子供たちが走ることに意欲をなくしてしまうんじゃないか、それが一番怖かった。
 6月、参観日のあとの懇談会で「ふう〜っ。勝てそうにないんですよね、リレーが。がんばっているんですが、いつも隣のチームと半周差がついてしまうんです」意気消沈する担任に苦笑するお母さんたちだったが、会のあと、Jくんのお母さんが「先生、半周でしょ?どうにかなりますよ」と自信ありげに言うのだった。「主人に聞いておきますね」・・・その時はよく意味がわからないまま、わらにもすがる気持ちで「お願いしますぅ」と頼んだのがコトの始まり。無知とはああ、恐ろしや恐ろしや、すごいことになっちゃうんですね〜、これが。
 2、3日して、Jくんのお父さんからトレーニング方法が書かれたメモが届いた。思ってもみなかった方法でしたよ。でも「なるほど、そうか〜」なのでした。こうしてメモをやりとりするうちに、ゲストティーチャーとして教えに来ていただいた方がいい、ということでお父さんが仕事の合間をぬって、学校にやってきてくれました。そう、こうして「プロジェクトX」まがいの特訓に突入するわけであります。リレーで勝つために自分のクラスだけがここまでやるなんて、まったく大人げないよね、とも思いました。でも、子供たちが「勝ちたい、早く走りたい」と願っているのをそのままにしておけない、何とかしてあげたい、という気持ちの方が強かった・・・。
 こうしてJくんのお父さんに簡単な基礎から実践まで教えていただき、それを見たり聞いたりするだけで子供たちの気持ちは高まり、皆が「もしかしたら勝てるんじゃないか」と思い始めたのであります。(実はこの後、冬に行われる持久走大会でもアドバイスをいただくことになるんですが、このお父さんのアドバイスは実に「目からウロコ」状態のことばかりでした。技術だけではないんです。なぜかというと・・・)
 初めてゲストティーチャーとして来ていただいた日、校長室でお茶を飲んでいっていただきました。一緒に話を伺ううちに、校長先生もわたしもだんだんと顔が青ざめていくのがわかりました。
お父さんは陸上の専門家であると共に、オリンピック選手やスポーツ選手のメンタルアドバイスをされる超スゴ〜いお仕事をされているお方だったのであります。話に出てくる有名なスポーツ選手の名前、それは全日本女子バレーの選手であったり、ボクシングの世界チャンピオンであったりしました。頭がクラクラしてきたのを覚えています。(次回に続く)