アイシテル

 チーがウルトラマン好きという話はしたが、もちろんおままごとやお人形ごっこなど、女の子らしい遊びも大好きでマーと二人でよくもりあがっている。きらきら光るアクセサリーにも大いに興味ありで、おもちゃの指輪、ネックレス、ブレスレットなど、ごちゃごちゃと宝箱に入れて満足そうに眺めたり着けたりしている。ディズニーの「プリンセス」たちは、そんなチーのおしゃまなハートをくすぐるらしく、縁日のふうせん、ズック靴、そして幼稚園で使う数々の巾着袋にこのプリンセスたちが登場している。白雪姫、シンデレラ、オーロラ姫、アラジンのジャスミン美女と野獣のベル、リトルマーメイドのアリエル、6人のお姫様の姿はどれも美しい。一緒にビデオを観ていると、その心の美しさに母であるわたしまでうっとりなってしまうのだから、ディズニー映画の奥は深い。ところで6人のうち、アリエルとオーロラ姫の物語をまだ観ていないオチビたちであった。パパが気を利かして久しぶりにビデオを借りてきてくれた。アリエルだ。見始めて少したつと、母には猛烈な眠気が襲ってきて知らぬ間に夢の中へ…。物語が終わる頃、イイ具合に目が覚めて、ハッピーエンドの結末を3人で喜ぶことができ(本当の人魚姫は悲しい終わりだったな、これでいいのかしら、と思いつつ)めでたし、めでたし。
 その後、夕飯の支度をしていると座敷で遊んでいたチーが、チョコチョコと走りよってきてこう言った。
「ねえママ、アイシテル、アイシテナイ、アイシテル、アイシテナイ、ってナニ?」最初は何を言っているのかわけがわからなかった。が、バナナの皮をむくような動作を見ているうちに、ああ、わかりましたよ。そして笑ってしまいました。「どうして、そんなこと知ってるの?」「アリエルが葉っぱでヤッテイタノ…」母がグーグー寝ている間にそんな場面があったんですなあ。チーたちにとってはそれがわかるような、わからないような、大変興味をそそられる行動だったのでしょう。さて、どうやって説明しましょう。「アイシテル、ってどういうことか分かる?」「うん、スキってこと?」「そうそう、だから、王子様はわたしのことが、すきかしら、きらいかしらって知りたくて、葉っぱでやったんだよ。お花でやることもあるんだよ」ニヤっと意味ありげに?笑ってチーはあっちへ行ってしまいました。
 ふうっ、こうやって、女の子は一つひとつオマセの階段を昇っていくのでしょうか。これから先、こんな場面が増えていくのでしょうかねえ。「好き」「愛する」、とても素敵な、人間であるがゆえに味わえる最高の感情なのに、「男と女」を意識してしまうと、構え、ぎこちなく語ってしまうのはどうしてかしら。ましては我が子へとなると怖いような気もするんだよね。学校で取り組む「性教育」も悩みがつきものだったのを思い出します。