どちらがいいか

 オチビたちの誕生日のころ、集まるたくさんのプレゼントやお誕生日会の様子をききながら、母はうらやましそうに「いいなあ、チーちゃんとマーちゃんは。ママももう一度子供にもどりたい」と言ったのでした。「いいでしょ」とばかりにありったけの笑顔をみせる二人。そんな会話はもう忘れていたのに。
 園から帰ってくると運動会の練習の話で盛り上がりました。2、3日たつと新しい練習が加わっていくようで、年少さんでもかなりのことを覚えなくちゃならないようです。行進、ラジオ体操、個走、年長さんとの団体競技、ダンス、始めの会終わりの会での歌などなど…。「いっぱい覚えることがあるんだねえ、大変だねえ!」と同情したように言うと、チーが「ママ、コドモはタイヘンなんだよ、コドモにナラナイほうがイイヨ、オトナのほうがイイヨ」と真剣にいうので「うん、うん」とうなずいてしまいました。マーも「マーチャンたちタイヘンなんだよ、アツイし、アセいっぱいかくワケ、もうホントにタイヘンなんだから」と続けます。この間の話を覚えていたんだ、とびっくりしながらきいていました。
 それからも何かあるたびに「子供がいいか、大人がいいか」についてふれるようになり、おもしろい論議がなされます。でも本当は「人間は子供も大人も両方を味わえるからそれが一番いいんだ」ってことは内緒にしてあります。いつか気づくのでしょうかねえ。それぞれの時代を満喫させてあげたいと願います。
 ところで、チーが下痢気味なので病院へ行った後、遅れて幼稚園に連れていきました。帰り際、年配の主任の先生とすれ違いました。すると「お母さん、かわいいお子さんたちですね」とおっしゃるので「?」。するとこの間のお誕生日会のことを話してくださいました。「最近、『お母さんになりたい』っていうお子さんは少ないですよ。わたし、ほのぼのしましたよ」母はなんだか照れてしまって「やだ、先生、違うんですよ、あの子たち、ウルトラマンプリキュアにはなれないってことに気がついたからですよ」と言ってしまいましたけど。仕事を辞めてから、他の人に誉められたり、認められたりということがなくなっていた母には、ちょっぴりうれしいご褒美でありました。