子は三界(さんがい)の首かせ

 年の瀬も近づいてきて、年賀状印刷のチラシや、クリスマスグッズ、来年のカレンダーなどが、どこのお店も所狭しとにぎやかに置かれている。書店でオチビたちの本を見ていたら、「江戸いろはがるた」と「おばけすごろく」を見つけたので、お正月用にと買ってしまった。でもお正月まで待っていられるわけないよね。さっそく「やろう、やろう」ということで、ビリビリと包装を破られてしまった。「おばけすごろく」は「せなけいこ」さんので、絵本のおばけシリーズでもう慣れたもの。「すごろく」の遊び方が分からないオチビたちに、コマの進め方から教えながら遊び始めたが結構楽しめる。
「江戸いろはかるた」はあの「飯野和好」さんのだ。うちのオチビたちは、この人の絵が好きで、ねぎぼうずのあさたろうくろずみ小太郎の大ファンである。季刊誌の読み聞かせ絵本「ほっぺ」には今月まで「すっとび!しんた、ちょうたのかごかきどうちゅう」が連載されていて、心待ちにして読んでいた。おもしろおかしいんだよね、この人の描く絵。「影響されてこんな絵を描くようになったらどうしよう、女の子なのに〜」なんて思ったけれど取り越し苦労だった。ちゃんとかわいい絵を描いている二人であります。
 で、わたしもはじめて「江戸いろはかるた」というものをよく見てみました。「いぬもあるけばぼうにあたる」から始まり、つぎつぎにことわざや格言が続くわけです。それが飯野さんの絵と重なると、まあ、楽しいのなんのって。一応国語教師だったこともあって、ことわざのほとんどは何となくわかったけれど、恥ずかしながら知らないものもありました。解説書を読んで「ほほう、そういう意味なんだ」と感心するわけです。その中の一つが「子は三界(さんがい)の首かせ」であります。解説書には「三界とは過去・現在・未来をさす。親は我が子を思うために、一生にわたり自由を束縛されるということ」と書いてありました。なかなか重い言葉です。そして言い得ています。たしかに子育てには自分の自由を束縛され、犠牲にするところがありますもの。そしていつまでも続く。わたしの両親なんて、娘のわたしがこの年になってもなんだかんだと世話を焼いてくれます…。でも、このことわざは子供の存在を否定するものでないんですよね。「江戸いろはかるた」というのは、江戸時代から昭和20年ごろまで読み札の内容がほとんどかわることなく、読み継がれてきたそうです。昔の人々の暮らしぶりがたくさん詰まっているわけです。昔は子育てといっても育てる子供の人数が違うでしょう。今のように一人、二人ではないのですから、本当に大変だったことでしょう。でも「一生にわたり自由を束縛される」ほど、まじめに、一生懸命に子供を育てていたということなんだろうな、と思えるのです。だからこのことわざは親となった人間が、心に刻んでおくべき戒めだったのではないかな、と。心して子育てにかかれよ、というメッセージがあるような気がしたんです。
 さて、わたしの子育てはどうでしょう。まだ始まったばかり、先は長い。でも、自由を束縛されるほどの付き合いの中で、子供から与えられる喜びや感動もまた大きい。だから育てていけるんでしょうなあ。(昔の人ももちろんそうだった!)「子は三界の首かせ」、忘れないでがんばっていくとしましょう。