サンタは来たか


 寒波が次々と襲ってきて、冬休みに入ったもののオチビたちを外に出すのもためらってしまうほど。でもこの寒さの中、以前から計画していた伊勢・志摩への旅行に23日朝から2泊3日で出かけた。クリスマスが近づいていて「サンタさん、イツクルノ?」とカレンダーを見てはたずねる2人。「あのね、24の夜に来るの。でもね、チーちゃんとマーちゃんはちょうどホテルに行っているからねえ、サンタさんどうするのかな」というと何やら紙を広げて鉛筆で書き始めたチー。のぞいてみるとサンタさんへ手紙を書いている。「さんたくろうす 12がつの24のよる ちいちゃんちは ほてるえ いってます」と。「そうか、サンタさんがこのお手紙読んでくれるといいね、もしかしてホテルへプレゼントもってきてくれるかもね」と言って(だめだ、あんな大きな荷物、伊勢まで持っていけないや)とあわてて「でも、トナカイさんが『サンタさん、そんな遠くまでいけませんよ、まだいっぱいお友達のところへ行かなきゃならないんですから』って言うかなあ」というと、そうか〜という顔をしているオチビたち。実はもうとっくにプレゼントは買ってあって家の押入れに隠してある。チーにはポポちゃんの「おしゃべりベッド」、マーにはメルちゃんの「ようちえんバス」、そしてもう一つおまけ、2人で一緒に作る「アクアビーズセット」。車で出かけるとはいえ、2泊の荷物はかなりになるので可愛そうだけれどプレゼントはやっぱり持っていけないよ。
 23日朝、家の前まで車を持ってきて荷物を積みこみ、先にチーとマーを乗せると、パパがもう一度さっと家に入って、居間にプレゼントをセットして出てきた。これで演出OK!では行ってきま〜す。
 ところがところが、雪の影響で東名が通行止め、そのせいで浜松から先がものすごい渋滞になり、道路上で車は2時間ピクリとも動かなかった。本当は10時台のフェリーに乗るはずが、予定は大幅に遅れ、3時前のフェリーの最後の2台にどうにか入ることができた。喜ぶのもつかの間、高波で船は揺れに揺れ、母はこみあげる吐き気に真っ青。パパがオチビたちの相手をしながら、やっと鳥羽に到着、もう夕方が近づいていた。調子の出ない母のためにとにかくホテルへ直行した一家でありました。
 翌日はスペイン村へ。でもとにかく寒くて寒くて、昨日の酔いもあって調子が出ない。オチビたちも顔が白くなっている…。乗り物と食事、買い物を済ませて、昨日行けなかった鳥羽水族館へ向かった。ジュゴンマナティの大きさに圧倒される!八景島や葛西臨海水族館とはまた違う規模と迫力に感嘆の声が上がりっぱなし。来てよかった。
 3日目は鈴鹿の遊園地でたっぷり遊んだ。天気も穏やかになり、鈴鹿だけあって、楽しい乗り物のアトラクションが目白押しでオチビたちは大満足。やっといい笑顔が見られてパパも母もほっ。
 それからの帰途の長〜い車内、話題は「サンタさんが来たか」どうかに集中。ホテルには来てくれなかったけど、家には来ているだろうか、と心配でたまらない様子のオチビたち。びっくりさせる手はずが整っているだけに何だか意地悪したくなって「もし来ていなかったらパパとママが買ってあげるから泣いたりしないでよ」などと言ってしまう。「うへ」(来てないの?)みたいなオチビたちの顔を見て吹き出しそうな母。
 午後8時前、ようやく家についた。玄関のカギをあけ、暗い家にあがる。居間の電気をパッとつけたとたん、「あーっ、あった、あった〜」と喜びの歓声!「サンタさん、来たんだ〜」と納得する二人の目のなんと輝いていること!荷物の片づけをする母とパパの邪魔をすることもなく、さっそく人形遊びに興じるオチビたちでありました。少しして、ばあばの家に無事戻った電話をさせると「あのね、ばあば、サンタさんが来てくれたの、パパがおうち、ぜんぶ閉めて行ったのに」とチーが興奮気味に話していました。そして電話を切ると「あのね、サンタさんはどこからでも入ってこれるんだって。スゴイネ〜」とまたまた感動した様子。ばあばがそう言ってくれたのでしょう。
 サンタさんが来てくれることを、こうやっていつまで信じてくれるのでしょう。いつ、おかしいな、と気づくのでしょう。以前koyateru先生に教えてもらった「サンタの真実にいつか子供は気づくだろう、でも幼いころに心に作られた「サンタがいる」という『不思議の住める空間』に、これから先も、美しく崇高なものが住んでいくとしたら、人生をどんなに豊かなものにしてくれるだろう」(うまく言えなくてごめんなさい)という言葉が心に涌きあがります。いっぱい、いっぱい夢を見せてあげたい、これは子供を「騙す」こととは違うんです。
 聖なるクリスマス。子供が真実を知り、受け入れるまでのこの先、そう遠くはない月日を思い巡らせながら、母はそれまで精一杯の演出家になろうと心に決めたのでした。