小さなヒミツ

 週末、園からの荷物を持ち帰るのに使った横断バッグ、チーのバッグの右上すみっこに、ペンで描きかけの女の子の絵があった。「あっ、いたずらがき!、チーちゃん、どうしてこんなことしたの」と言うと、ちょっと困った顔をして「ヨっちゃんがヤッタの」という。ヨっちゃんはチーの一番の友達、家にも遊びにきたことがあって、とっても気持ちのイイ子だった。(そうか、魔がさしたのかねえ、まあいいか、洗剤でこすれば落ちるだろう)と軽く考え、話はそこで終わっていた。ところが、洗剤やシンナー類を使っても落ちないのです、これが・・・。
 で、夕飯の時、思い出して「チーちゃん、いたずらがき、落ちないよ。どうしてヨっちゃんに、『やめて』って言えなかったの」とお説教の始まり、始まり〜。ご本人、「あらら」という顔で「わ、わすれちゃった」とポツリ。そこへマーが「あのね、チーチャン、『描いてもいいよ』って言ったんだよ」「えっ?どうしてあんた、違うクラスなのに知ってるの?」「だって、そうだもん」で、チーの顔をみると「あは!」みたいな顔でますます困ってきている。「チーちゃん、ほんとにそんなこと言ったの?」「え〜っと・・・ひ・み・つ」ああ、本当なんだ。も〜、まったく〜。でも困るチーの顔がなんだかかわいくなってきて、もうちょっといじめてやろう、などと思う母。「ねえ、マーちゃん、ヨッちゃんに言っておいてよ、『お友達のものにいたずらがきしちゃだめだ、ママが怒っていたよ』って」というと、はりきったように「うん、わかった、わかった、言っておく」となぜかうれしそうな?マー。
 すると、おもむろにお箸を置いて、チーがイスからおり、母のイスに寄って背伸びし、耳元でささやきましたの。
「あのね、ママ・・・、チーチャンもヨッちゃんのバッグに描いちゃったの・・・」
ガーン!でも「ぶははははっ」なんだかおかしくて笑い転げました。仲良しの2人はきっと、バッグを交換して悪いことをやったんでしょうねえ。「?」顔しているパパとマーに「チーチャンも描いちゃったんだってさ」と言うと、パパも大笑い。マーもそこまでは知らなかったらしい。ほんと、こうなると「うちの子にかぎって」なんていうのは絶対ないね。あきれるやら、ほんとのことを言う我が子がいじらしいやらで、しばらく笑いがとまりませんでした。で、マーに「ヨッちゃんにはもう言わなくていいからね。」
 翌日、習い事の関係で園にお迎えにいくと、チーの担任が「お母さん、すみません、いたずらがきさせて。今日、2人に話をしておきましたから」と言う。とっさに「いいえ、すみません、ご迷惑をおかけして」と返しておいたが、(??どうして先生は知ったのかしら?連絡帳に書いたわけでもないのになあ)と不思議顔でいると、「ママ、マーチャンが話しておいたから」と自信ありげにいう者1名。これからは「チクリ屋マーチャン」と呼ぶことにしよう。用心、用心。