人間のままがいい


 新学期が始まり、オチビたちはもう年長になりました。早いものです。バスにさらわれるようにつれていかれてしまうのを、切なく見送ったあの頃が懐かしい。今じゃ、もう早く乗っていってしまえ〜、ぐらいに思っちゃうものね。でも、クラスや友達が変わるこの4月はやっぱり大きなストレスになるらしく、とくにマーが不安定な感じです。
 そういえば、日記を中断していた2月ころ、一緒にお風呂の湯船につかっていると、マーがぽろぽろと涙をこぼし、「マーちゃんはダイガクにはイカナイノ・・・」と言う。そんな話、突然するので「どうしたの?なあに、その話?」と聞いてみると、それよりちょっと前、おばあちゃんちにお泊りしたとき、チーが、「幼稚園終わったら小学校、そしたら中学校、そしたら・・・」と次々に聞いているうちに、ばあばが「大学はね、パパとママのおうちからはなれて、ひとりで違うおうちに住んで通うんだよ、じいじやばあばともはなれちゃうんだよ。」というようなことを教えたらしい。「そんなのやだー」と言い返す元気がまだあったらしいんだけど、「でも大学でいっぱいお勉強すると、自分のなりたいものになれるし、やりたいお仕事ができるようになるんだよ、パパとママみたいにね」と言われ、何だか言い返せなくなったんだろう。そんなやりとりの直後に、テレビドラマの「オカンと・・・東京タワー」を見たようで、ちょうど主人公のマーくんが上京する話、故郷のホームから走りだす電車に向かってオカンが「マ〜く〜ん〜」、そして、涙でくしゃくしゃになりながらにぎり飯をほおばる主人公のシーンを見てしまったんだね、もうとどめをさされてしまったというか、泣きっ面にハチ?というか、きっと心の中で「やっぱりこんなツライ思いをするんだ、ダイガクには行くモンカ」って幼心に誓ったんだろうね。
 「マーチャンハ、イカナイノ、マーチャンハ ニンゲンのままでイイノ」と泣きじゃくりながらいうので、噴き出しそうになった。「人間のままでいいって、マーちゃんはいつも人間だよ、サルにも犬にもなれないさ」というと、チーがエヘッと笑った。それでも「マーチャンハ、にんげんの ままで イイノ」と繰り返して言うマー。きっと、
自分には学歴も何もいらない、大学に行かないで、ただ普通の人になりたい、って言いたいんだろうね。かわいくて、けな気で、そんなに自分の家の居心地がいいと感じているんだと、こっちももらい泣きしそうになってしまった。へんな親子・・・。
 それから思い出すたびに、「マーちゃん、大学行く?」っていじわるして聞くけど、いつもきっぱりと「NO」!
と答えるから、筋金入りだね。
 聞いていながら、うそだ、いつかきっとこの家から離れちゃうんだろうなあ、とリアルに想像して物思いにふけってしまう母でした。